英国や米国のジャーナリストらの斬首映像を公開し、欧米各国へのテロ行為を宣言するなどして世界中を恐怖に陥れているイスラム教スンニ派武装組織「イスラミック・ステート(IS):イスラム国」。
9月には、オーストラリアの市街地で無差別テロを企てたとして、シドニーやブリスベンで容疑者2人が逮捕されるなど、世界中にその波紋を広げている。
日本では10月11日に北海道大学の男子学生(26)がイスラム国に戦闘員として参加しようと企て渡航前に逮捕されるという事件も発生し、日本中に衝撃を与えた。
エリート国大生が過激派組織に参加するという、まるでかつてのオウム事件をも彷彿とさせる構図に嫌な記憶をよみがえらせた人も少なくはないだろう。
“自分探し”というモラトリアムに奔走し自殺へと突き進む日本人の若者
しかし、ふたを開けてみれば、この事件はどうやら「イタイ奴のおふざけ」という実情が表出してきて、逆に問題化しつつあるという。
というのも、最近の詳報によれば、この北大生はチケットこそ購入していたものの、実際に渡航するかどうかについては不明で、そもそも悪ふざけしているだけの人物だった感がある。
また、この北大生のツイッターを見ると、彼は心や体に障害を持つ人に対して侮蔑的な投稿を頻繁にアップしているほか、事件を起こす前に以下のようなつぶやきを連投している。
イスラム国への参加を企てた北大生のものとされるツイッター
異常者に首を切られる体験が出来るの貴重だし、モスクは最高の場所
— 障害者 (@gravestone11) 2014, 10月 5
@各位 もうすぐ死ぬのでお勧めの風俗に連れて行って下さい
— 障害者 (@gravestone11) 2014, 10月 5
死にたい
— 障害者 (@gravestone11) 2014, 10月 5
今回の事件の背景は、
もともと就職活動に失敗したことなどからこの北大生には自殺願望があり、古書店の張り紙をきっかけにちょっと大きな口を叩いてみたというのが実情のようだ。
さらに、北大生のシリア行きを仲介したとされるイスラム法学者の中田考氏のポジションも極めて不可思議だと感じている人は多いことだろう。
「イスラム法学者」という肩書に惑わされそうになるが、
中田氏も一般的な視点から見れば、その精神バランスについては、渦中の北大生と変わりはないかもしれないと思える節がある。
というのも、彼はネットメディア「Videonews.com」のインタビューにおいて、
MCの神保哲生氏から「26歳にもなる学生を紹介すること自体いかがなものか」と問われたところ、
「私も5年前から、死に場所を探していると公言している」
「私は専門家なので(死にたいが)死ねない」
「イスラム教では自殺は禁じられているが、ジハードは唯一死ねる方法」
などと語っている。
↑イスラム法学者・中田考氏のインタビュー
これら中田氏の発言は、動画の中ではさらりと流されているが、
イスラム国関係者による「市街地テロ」が実際に起きそうになり、非常に身近にテロを実感せざるを得なかったオーストラリア在住者としては、かなり異質なものに感じる。
まるで「自分がどう死のうがが自分の勝手だ」「誰にも迷惑をかけなければどう死んでも構わない」というような主張に聞こえる。
また、「宗教の自由」や「言論の自由」を盾に、自身の歪んだ内面を美化または正当化しようとしているように思えなくもない。
いずれにしても、この北大生が起こした事件は「イスラム国」とも「イスラム教」とも関係のない、
「モラトリアムに奔走する、“痛い”自殺願望者」の姿をさらけ出しているように感じるのだ。
同じく「死ぬ権利」という観点から考えてみても、10月6日に末期がんによって安楽死すると宣言したブリタニー・メイナードさんの件と比較すると、この北大生の命への思いの軽薄さや、行為自体の陳腐さは否めない。
↑夫の誕生日の翌日である11月1日に安楽死すると宣言したブリタニーさん(29)
このように、一見大きな事件に思えた「日本人によるイスラム国への参加未遂事件」は、どうも馬鹿馬鹿しい事件だったように映るのだ。
Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.