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コロナ禍でも好調なオーストラリア・QLD州の対日農業ビジネスについて農水相に聞いた

オーストラリア北東部に位置するクイーンズランド州。グレートバリアリーフの玄関口であるケアンズやビーチリゾートのゴールドコーストなど観光地として有名だが、日本人の食生活に欠かせない食糧供給基地でもある。「オージー・ビーフ」の主産地であり穀物やサトウキビの生産も盛んだ。
新型コロナウィルス感染症の影響から、G20各国でも農産物の輸出を制限する動きがある中、同州からの日本向け農産品輸出額は前年度比3.7%増と好調を維持している。
そんな中、農産品の輸出をさらに伸ばしたい同州政府は9月1~3日、バーチャル貿易ミッションを開催した。同州のバーチャル戦略とは何か? 同州マーク・ファーナー農業・水産大臣に話を聞いた。

(聞き手:在豪ジャーナリスト・守屋太郎)


バーチャルな取り組みは新しい日常。強い経済を維持するには欠かせない

Mark Furner - コロナ禍でも好調なオーストラリア・QLD州の対日農業ビジネスについて農水相に聞いた
マーク・ファーナー(Mark Furner)クイーンズランド州農業・水産大臣
クイーンズランド州ブリスベン出身。2007年〜2014年オーストラリア連邦議会上院議員。2015年よりクイーンズランド州議会(1院制)議員。2017年より現職。大臣就任以来、州内を4万キロ以上出張し、生産者の生の声を聞いて回っている。

公式HP:https://bit.ly/35vVL8N

Q:世界的なコロナ感染流行の真っ只中にあって、クイーンズランド州政府は農産品・食品の日本への輸出をどのように支援しているのですか?

ファーナー大臣:クイーンズランド州だけではなく、オーストラリア全体がパンデミックによる大打撃を受けています。クイーンズランド州政府のコロナ経済対策「クイーンズランド雇用再生計画」(The Unite and Recover for Queensland Jobs Plan)では、農業関連の事業に1,250万豪ドルの予算を確保しました。このうち、主な事業としては次の3つがあります。

1つ目は、農業ビジネスのデジタル化です。550万豪ドルの予算を投じ、トレーサビリティー(生産から最終消費地までの追跡可能性)やバイオセキュリティー(有害生物や疫病の国内侵入を防止する措置)、食品の安全性を向上させるため、総合的なサプライチェーンを構築します。

次に、農産品貿易を再活性化させるために500万豪ドルの予算を割り当てています。主要な輸出市場において、電子商取引やバーチャル貿易ミッションを支援します。

さらに、(コロナ禍による減便で航空貨物の輸送能力が下がっていることから)航空貨物の需要拡大にも対応しています。オーストラリア連邦政府の「国際貨物輸送支援事業」(International Freight Assistance Mechanism=IFAM)を通して、日持ちのしない高級な農産品のクイーンズランド州から日本への空輸を促進しています。現在、IFAMではブリスベンから成田国際空港への週1便の運航を支援しており、クイーンズランド州産品の対日輸出を維持しています。


Q:バーチャル貿易ミッションについて、詳しく教えてください。

ファーナー大臣:バーチャルな取り組みは(コロナ禍における)新しい日常です。強い経済を維持するには、バーチャルなビジネスが欠かせません。輸出は雇用に直結します。付加価値の高い農産品や食品・飲料を海外市場に引き続き供給するために、クイーンズランド州はできることは何でもします。そのことを私たちの大切な貿易パートナーに知っていただく必要があります。そのために、バーチャルな会合やイベントは有効な手段になるのです。

現在の世界的なパンデミックによる渡航規制に対応するため、クイーンズランド州政府は9月1〜3日の3日間、「バーチャル貿易ミッション」を試験的に実施しました。

このミッションでは、マイクロソフト社のティームズ(Teams)などのオンライン会議ツールを活用しています。州内の25の農産品・食品の新規輸出業者に対して、クイーンズランド州駐日事務所の安達健代表と彼のチームによる、オンライン会議ツールを活用した説明会を実施するなど、様々なイベントを開催しています。

州内各地からミッションに参加した輸出業者は、この説明会で日本人の消費志向や、小売業界の現状、電子商取引の可能性、日本を代表する食品見本市「FoodEx JAPAN 2021」について学んでいます。

説明会は、クイーンズランド商工会議所(CCIQ)との共催です。CCIQは、FoodExに実際にミッションを派遣するか、バーチャルなミッションを派遣することを検討しています。

クイーンズランド州政府は、FoodExなどのイベントを通して、日本のバイヤーや消費者がクイーンズランド州産の斬新な農産品について知ってもらえるように、引き続き力を注いでいきます。コロナ禍に負けない、新しい世界に勇敢にチャレンジしていきます。

また、私は日本の農林水産省の幹部とハイレベルのバーチャル会談も行いました。日本の農林水産省は、クイーンズランド州北部における青果栽培の研究事業への協力に興味を示しています。このプロジェクトは、クイーンズランド州と日本の生産者の双方に長期的な恩恵をもたらすでしょう。

さらに、クイーンズランド州北部における新型の「開閉式屋根付き温室」(Retractable Roof Greenhouse=RRG)を日本の農林水産省に紹介します。RRGは州農業・水産省による温室栽培の研究事業のために開発されました。この研究は将来、季節が逆であることを利用して、付加価値の高い新しい作物の生産につながる可能性があります。例えば、クイーンズランド州の生産者がスイートメロン、より小ぶりなナス、表面に汚れのないトマトなどを栽培し、日本や他のアジアの市場に輸出することを想定しています。

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写真はイメージです


農場から消費者まで全行程で高い信頼性と安全性を実現

Q:なぜ日本がバーチャル貿易ミッションの対象に選ばれたのですか?

ファーナー大臣:最大の理由は、日本とクイーンズランド州が長年、強力な信頼関係を培ってきたことです。田中一成・在ブリスベン日本国総領事がクイーンズランド州におられることも、大きな支えになっています。田中総領事とは着任以来、友情を育んできました。昨日のバーチャル貿易ミッションにも参加していただきました。クイーンズランド州と日本の関係発展に対する田中総領事のご尽力に感謝したいと思います。

クイーンズランド州にとって、日本が非常に大切な市場であることは間違いありません。日本はクイーンズランド州にとって2番目に大きな貿易パートナーであり、農産物の輸出においては最大の市場です。

2019/2020会計年度(2019年6月30日〜2020年7月1日)のクイーンズランド州の農産品の輸出額は全体で推計95億5,000万豪ドル(約7,386億円)ありましたが、このうち日本向けは19.7%を占めています。

クイーンズランド州と日本の農業貿易は、新型コロナウイルスのパンデミックにもかかわらず好調に推移しています。

クイーンズランド州から日本への輸出額は全体で前年度比17%減少しましたが、農産品の対日輸出額は推計18億8,100万豪ドル(約1,455億円)と3.8%増えました。

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農産物の輸出額は直近5年右肩上がりとなっている

農産品の対日輸出の伸びをけん引したのは牛肉です。クイーンズランド州産牛肉の対日輸出額は推計16億豪ドル(約1,238億円)と前年比で4.1%増加しました。

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農産品の中でも特に牛肉の輸出額が伸びている

クイーンズランド州は63カ国・地域に牛肉を輸出していますが、日本向けは数量、金額ともに最大です。日本は最も大切な顧客なのです。

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QLD州産牛肉の主な輸出先としての日本は最大のシェアを誇る

Q:クイーンズランド州産牛肉が特に優れている点は何ですか?

ファーナー大臣:1カ月前に田中総領事といっしょに牛肉生産の現場を視察したのですが、クイーンズランド州産牛肉の評価を再認識しました。その信頼性と安全性を支えているのは、強力なバイオセキュリティーや動物愛護、誠実性に加えて、国内で開発された革新的な技術と専門的知識です。こうしたクイーンズランド州産牛肉の強みが、消費者の需要に合致しているのです。クイーンズランド州産牛肉が世界の高級牛肉市場において高い評価を得ていますが、日本が最も大切な市場であることは言うまでもありません。

中でも、食品安全性は極めて重要です。農場から消費者に至るまでのサプライチェーンの全行程において、非常に高水準の安全性を確保しています。

こうしたクイーンズランド州産牛肉の安心・安全は、政府の規制や業界の認証制度、独立した機関の検査によって支えられています。

また、クイーンズランド州の牛肉産業は、多様な消費者のニーズに応じています。私たちは、「グラスフェッドビーフ(放牧場で牧草のみを食べさせた牛の肉。一般的に赤身が多い)」と「グレインフェッドビーフ(肥育場で出荷前の一定期間、穀物を食べさせた牛の肉。一般的に脂肪分が多い)」の両方を生産しています。私は個人的にグラスフェッドが好きですが、脂肪分の少ない赤身肉から脂肪分の多い霜降り肉まで幅広い需要に対応しているのです。

私たちは和牛の遺伝子を導入した牛を生産していて、日本の消費者のニーズに対応しています。和牛遺伝子の導入により、非常に幅広い種類の高級牛肉を生産することが可能になりました。

もちろん、私たちの牛肉輸出が成功した重要な要因としては、クイーンズランド州の生産者と多国籍企業の戦略的な協力関係もあります。例えば、日本ハムグループのような企業は、州内の牛肉のサプライチェーンに投資して成功を収めています。

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QLD州の牛肉産業にとって日本市場は最重要。日本企業と引き続き協働していきたい

Q:クイーンズランド州は日本企業による投資を歓迎しますか?

ファーナー大臣:もちろん大歓迎です。私たちは日本の投資家、牛肉生産者との間で非常に良い関係を築いています。クイーンズランド州政府は農業への投資を力強く支援しています。投資は日本とクイーンズランド州の関係にとってきわめて重要です。

クイーンズランド州政府貿易・投資庁(TIQ)が投資促進の活動を担うとともに、クイーンズランド州農業・水産省がこれを現地で支援しています。放牧場から肥育場、牛肉加工工場、農業技術の分野、農業関連のサービス産業に至る牛肉産業のサプライチェーンの全行程において、民間企業の投資促進に尽力しています。

クイーンズランド州産の高級牛肉の生産と輸出における潜在的な可能性をさらに広げるために、私たちは今後も引き続き日本企業と協業していきたいと考えています。

Q:東京のクイーンズランド州政府駐日事務所は、日本からクイーンズランド州への投資をどのように促進していますか?また、クイーンズランド州とビジネスを行う日本企業をどのようにサポートしているのでしょうか?

ファーナー大臣:彼らは非常に誠実でプロフェッショナルな仕事が評価されています。その質問は、クイーンズランド州政府駐日事務所の安達健代表に答えてもらいましょう。

安達代表:東京の駐日事務所は1979年に設立されました。約40年の歴史があります。私たちは日本におけるクイーンズランド州政府の代表機関です。クイーンズランド州での投資やビジネス拡大を検討している日本の企業のお問い合わせやご相談に応じています。牛肉や食品などの農業分野だけではなく、幅広い産業を対象に商機拡大のお手伝いをしています。

ビジネスパートナーを見つけることを支援するのが、私たちの専門分野です。「クイーンズランド州から輸入したい」とか「クイーンズランド州に投資したい」といった日本の企業の要望があれば、専門的知識を持つ州農業・水産省やTIQの本部と密接に連携して、クイーンズランド州側のパートナーを探します。最近では、例えば青果生産の分野で大きな成功例があります。

日本とクイーンズランド州の架け橋になるには、日英の言語と、日本とオーストラリアの双方の文化を完全に理解する必要があります。私たちは双方の文化の違いを理解した上で、きめ細かいローカルの知識を日本の方々に提供することができます。

Q:最後に大臣から一言お願いします。

ファーナー大臣:2年前に日本を訪問した時から、今年(2020年)の末に訪日する計画を立てていました。日本は美しい国です。人々も素晴らしい。残念なことにパンデミックによって日本を訪れることはできなくなり、このようにオンラインで話をすることしかできませんが、日本の友人やパートナーとはこれまでと同様に力強い協力関係を続けていきたいと思います。そして新型コロナウイルスが終息し、安全に渡航できるようになれば、ぜひ日本を再訪したいですね。

(インタビューは2020年9月2日にオンラインで行われました)


農業ビジネスの他にも実績多数。日本の民間企業の海外進出をサポートするQLD州政府駐日事務所

このように、日本とクイーンズランド州が農業ビジネスを通じて深くつながっていることは分かっていただけただろう。とは言え、日本の民間企業が豪州でビジネスを展開する際、政府に直接連絡できると考える人は少ないのではないだろうか?

クイーンズランド州政府では、日本とオーストラリアの双方の文化と言葉を熟知した在東京の駐日事務所のプロのチームがまるで商社のような役割を担い、TIQの本部や州農業・水産省と連携してビジネスパートナーを見つけたり、商品を探したり、現地情報を提供するといったサービスをすべて無料で提供している。

これまでにも、海外進出を考えている企業に対して、現地のパートナー企業を紹介してJVの事業の立ち上げにつなげたり、住宅会社の日本進出に現地の税理士や弁護士、現地の仲介会社を紹介して買収につなげたケースもある。また、日本のアグリテックの会社のオーストラリアでの企業展開のために、QLD州のプログラムを利用して事務所を無料で貸すなど、海外進出を目指す企業に対して多大な貢献をしてきた。

「クイーンズランド州に投資したい」、「何か良い商品を輸入したい」と考えている人がいれば、ぜひ駐日事務所に連絡してみよう。

Daiji Takashima - コロナ禍でも好調なオーストラリア・QLD州の対日農業ビジネスについて農水相に聞いた
上席商務官:高嶋大士さん
Nami Nagao - コロナ禍でも好調なオーストラリア・QLD州の対日農業ビジネスについて農水相に聞いた
商務官:長尾奈実さん
お問い合わせ なお、本記事をまとめたメディアリリース(PDF版)は以下よりダウンロードできます。ぜひご活用ください。
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【お問い合わせ先】
クイーンズランド州政府駐日事務所(農業・食品分野担当:高嶋・長尾)
Email: Daiji.Takashima@tiq.qld.gov.au
電話:+81-3-6841-0595

 

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