体罰のある海外の学校とない学校を豪・英・米で比較して分かったこと
文科省が発表した調査によると、令和5年度(2023)の学校における体罰の発生件数は全国で472件、体罰を受けた児童生徒数は834人だった。前年度(令和4年度)の572件・991人からそれぞれ減少しており、日本でも体罰禁止への意識は高まっている。
では、海外移住や子供の留学を考えている親御さんは、子供が海外の学校に行けば日本よりも体罰への不安は軽減されるのだろうか?
答えは「否」である。
確かに多くの先進国では体罰は禁止されている。特にヨーロッパでは厳しい。しかし、それは主に「家庭内」でのこと。学校には学校のルールがあるため、必ずしも自分の子供が教師から体罰を受けないという保障はないのが現状だ。
そこで今回は、学校での体罰事情について、イギリス、アメリカ、オーストラリアにおける概要をお伝えする。小学生〜中学生の期間に海外留学を目指しているお子さんを持つ親御さんにとっては気になるテーマだ。果たして、どこの国が体罰の少ない国なのだろうか?
体罰は教育上有用という英国

イギリスやアメリカの映画などでは時々、子供が教師にお尻を叩かれたり、鞭で打たれたりする場面を見ることがある。
これは昔ながらのイギリスの教育方法に体罰が取り入れられてきたからだ。
そんなイギリスもかつては、「体罰禁止」を法制化したことがある。
1986年、イギリス政府は公立学校における「体罰禁止法案」を可決した。また、2000年までにイングランド、ウェールズ、スコットランドの私立学校でも体罰が禁止となった。
また、1998年には家庭内で体罰を禁止となったが、これにより学校の規律を守らない子供たちが増えたとして、2001年、クリスチャン系の私立高校の教師や保護者らが最高裁に対し「体罰復活」の訴えを起こした。
この裁判の影響から、2006年イギリス政府は教育法を改定。規律を乱す学生に対して、教師が懲戒できる権利を保障する内容を付け加えた。
ただし、お尻を叩くのは6回までなどの細かな規定があるなど、これらの細かな規定は主にキリスト教の教えと関連しているという。
体罰が法規制されていない州が19もある米国
体罰に対して厳しい目を注ぐヨーロッパに対し、アメリカが意外と体罰を容認している国であるということはあまり知られていない。
米国では2022年時点で約7万人の児童が学校で体罰を受けたとされる。1980年代には年間100万人以上いたことを考えると大きく減ってはいるが、それでも数字としては無視できない。
さらに驚くのは、法的に教師が児童に体罰(physical discipline)を行うことを条件付きで容認している州が2024年時点で17州もあるということだ(実際に実施しているのは12州)。
米国の公立校で体罰が法的に容認されているおもな州は以下の通り。
- アラバマ州
- アーカンソー州
- ジョージア州
- ミシシッピ州
- ルイジアナ州
- アリゾナ州
- フロリダ州
- ミズーリ州
- カンザス州
- オクラホマ州
- テキサス州
- インディアナ州
- ノースカロライナ州
- サウスカロライナ州
- ケンタッキー州
- テネシー州
- ワイオミング州
主に南部の州が多く、中でもアラバマ州、アーカンソー州、ジョージア州、ミシシッピ州、テキサス州は体罰件数の約70%を占める。なお、コロラド州とアイダホ州は2023年に体罰を禁止しており、容認州はかつての19から17へ減っている。日本人が多く住む州は体罰が少ない傾向にある。
州や学校によってまちまちの対応となるオーストラリア

イギリスの教育制度の流れをくむオーストラリアもかつては体罰容認国だったが、イギリス同様1980年代後半から体罰禁止の気運が高まり、法整備が進んだ。
アメリカと同じく州によって対応が異なるのが特徴で、クイーンズランド州を除くすべての州で公立・私立ともに学校での体罰が禁止されている。暴力的な体罰ではなく、活動に参加させないタイムアウトなどの非暴力の懲罰を取り入れる学校が多い。
体罰に対して厳格なのがシドニーのあるニューサウスウェールズ州(NSW)とメルボルンのあるビクトリア州(VIC)。NSWは公立校が1990年、私立校が1995年に体罰を禁止。VICは公立校が1985年、私立校が2006年に禁止している。
一方、クイーンズランド州(QLD)は公立校こそ1989年に体罰を禁止したものの、私立校における扱いは法律上も曖昧な位置づけとなっている。1899年の刑法典に「親や教師は合理的な範囲で体罰を加えてよい」との規定が残っているためだ。
とはいえ、オーストラリアでは「Safe and Supported:オーストラリアの子供を守るための国家枠組み(2021〜2031)」が設けられ、州政府および連邦政府が子供の人権と安全を守る取り組みを強化している。これは2009〜2020年の枠組みを引き継ぐもので、児童の安全を守る風潮はこれまで以上に高まっている。
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